「公取委がアニメ産業の実態調査報告」について、あえてプロダクション側へ言いたいこと

最近のグッジョブなニュースのひとつですが、アニメ業界を応援するものとしてもう一歩踏み込んでこのニュースにコメントしたいと思います。

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/01/23/22196.html

せっかく公正取引委員会が踏み込んでくれたのだから、「これはプロダクションやクリエイターに非はありませんね」という結論が出ることを望みたい。テレビ局や広告代理店がやらずぼったくりしすぎているのは明白。現実にテレビ・広告代理店のアニメ担当者に話を聞いたこともあるが、もうそこはガッチリとシステム化されており、どうしようもない搾取構造が出来上がっているのを感じた。
でも、公正取引委員会が踏み込んでもこのシステムが是正されないのではないかという不安がある。そしてその不安はどこからくるのか。ある程度プロダクションに是正を迫られなければならない部分が存在するからだとも感じる。ここではあえてその部分に触れていきたい。

日本のアニメプロダクションはどんなに小さな会社でも、そしてどんなに小さい予算でもガイナックスのような演出とI.GのようなCGと4℃のような特殊効果とマッドハウスのような魅力と京アニのような萌える作品でよく動くアニメを作ろうとする。そしてそれは発注側が期待している現状もむかつくところだけど、何より制作者側がそれを目指してしまっている。
高みを目指そうとするのはいいのだけど、全員エベレストに登ろうとする。言ってみれば、身の丈や予算に合わないものを作ろうとしてしまうのだ。
制作者側からしてみれば、最高のクオリティを見せないと視聴者が納得しないという不安は常に付きまとっている。たしかに初代ガンダムや、あしたのジョー1のころと比べたら今のアニメは平均的にもものすごいクオリティを保っている。なるほどこのクオリティを保とうと思ったら1話30分1200万かかるわけである。そしてそれを500万で請ければ原画マンはホームレスになり、作画監督は過労死し、技術は中国に流れていくわけである。

しかし、ハイクオリティを保たなければ納得しない視聴者っていったいどんな人種だろう?

一部のアニメオタクだけじゃないだろうか?

なぜアニメ界は全国民に向けて作品を作るのではなく、アニオタに向けてのみ作品をつくるようになったのか。
日本で視聴率が高いアニメはサザエさんであり、ちびまる子ちゃんであり、ドラえもんである。劇場版はさて置いておいて、これらのアニメがどれだけなめらかに動き、どれだけ激しいカメラワークをし、どれだけ服のしわを細かく描いているというのか。
アニオタは「あれは庶民のアニメ」だなんてバカにするだろう。
しかしアニメもひとつのエンターテイメントである以上、庶民に向けて作られるのは当然で、そこで大きく支持を受けている作品を否定することは極めて愚かなことだと思う。
また、アニメのほとんどはお年寄りを視聴者からはずしてしまっている。しかし日本の4分の1は60歳以上だ。そしてそのお年寄りがフルアニメーションを礼賛し1秒6フレのアニメを嫌うことは考えにくい。

アニメを一部のアニオタにのみ独占させて、一部の人間の財布からしか制作費を回収できないシステムにしたのは誰あろう、プロダクションなのではないだろうか?
そしてアニオタという一部の人間に向けて作られた結果、プロダクションは同じようなアニメしか作れなくなってしまったのではないか。ストーリーがつまらない萌えアニメがたくさん作られた背景はここにあるのだと思う。
若い世代でも「美少女キャラ=キモオタ」という図式が出来上がっている人は確実にいて、そういう人たちはアニメを忌み嫌う。「アニメが好き=キモイ」という図式は現実に存在する。

中小プロダクションはもっと個性を出し、アニオタに否定されようとも、アニオタ以外の人々に愛される作品を生み出す努力をしなければならない。そうしないとクリエイターが疲弊するのみで、寡頭競争の中でいとも簡単に淘汰されるだろう。



あとそれからもう一つ
アニメーター上がりの人見知り激しい社長やプロデューサーを交渉の場に出して大敗し、その下のクリエイターが辛い思いをする図式はもうやめてほしい。テレビ局、広告代理店、製作委員会向けに交渉用プロデューサーを他業界から引き抜いてでも雇ってくださいよ。

ついでにもう一つ
公取委は今回初めて制作会社533社にアンケートを行い、114社から回答を得た。」と記事にあるけど残りの419社なにやってんの?!!
忙しいのわかるけど、ここで何とかがんばって実態をみせないとだめだろ?!この419社は今のままで満足とでも思っているのだろうか?