やっぱりプロのクリエイターはいなくはならないって

PCの高性能化、優れたアプリケーションや動画共有サイトの出現で、アニメ作りや音楽作りがどんどん庶民のものになってきた。
そういったクリエイティブの世界においてプロとアマとの垣根がなくなり、1億総クリエイターと言う言葉も生まれ、プロクリエイター不要論も飛び出してきた。私の周りでも動画共有サイトの出現を理由に廃業すべきかどうか悩むプロクリエイターもいる。でも私は「ちょっと待て」と言う。
昔は、音楽や映像は巨額を投入しなければならないような機材やスタジオで作られており、そのような環境をコントロールできるポストは極少数だった。つまりその限られたポストに立てる極少数の人間がプロと呼ばれ、多大な責任とそれに見合った、もしくはそれ以上の多額の報酬を得ていた。だからプロクリエイターはまるで「特権階級」のように扱われていた。
現在はそのようなポストにたたなくても作品は作ることが出来る。だからプロクリエイターの「特権」は失われたかもしれない。
「アマチュアが作ってタダでネットでアップするものの方がおもしろい」とか「金出して音楽聴いたりアニメ見たりするなんてバカみたい」と思うユーザーも増えてきた。だからプロのクリエイターは食っていけない。音楽やアニメはネットで無料で楽しむ時代の到来という話も出てきた。
しかし、現状をみるとどうだろう。結局VOCALOID、アイマスのように結局限られたジャンルの派生物のような作品ばかりが支持を得ている。そしてどれも、クリプトン、バンナムのような企業に商業的な支援も受けている形のものばかりだ。純粋にアマチュアだけで作り上げたムーブメントは一時的なものであっという間に忘れ去られる。そして事実、ニコ動で活躍していたアマチュアはCD発売でプロへと転向していった。
嫌儲思想がはびこっていた過去のFLASHブームから見ても、FLA板の衰退とともにアマチュアのFLASHクリエイターは忘れ去られ、蛙男商会とかやわらか戦車のように商業としてのFLASHアニメは生き残っている。
動画共有サイトは実業団野球であり、甲子園でしかない。ここにいる選手達がいくら活躍してもプロ野球はなくならない。同人誌がこれだけ普及していてプロ漫画家より同人誌作家の方が儲かるケースも見受けられると言うのに、プロの漫画家はいなくならない。
ニコ動やYoutubeが商業主義不可侵のアマチュアの聖地のように錯覚している人もいるかもしれないし、そういう人は私の周りにたくさんいる。でもクリエイターなら誰だって作品作りに没頭できるだけの時間とお金はほしいものだ。だから結局自分の作品で生活費が得られればそれに越したことはないのである。つまり動画共有サイトは商業ベースで生きるプロデューサー達のクリエイター市場(いちば)といえる。
その点、クリエイター市場が活性化し、とうに旬がすぎて面白いものつくれないのに名前だけで食っているクリエイターが市場から消されるという点で動画共有サイトの出現は意味があるのかもしれない。
ただ、商業主義に走るクリエイターをいくらニコ厨が叩こうと、その流れは決してとめることは出来ないし、プロのクリエイターはいなくならない。「売れるものしか売らない」商業主義の姿勢を嫌ってニコ動やYoutubeユーザーになった人もいるだろうが、結局ニコ動では表現の多様化はほとんどなされず、VOCALOIDやアイマスのMADばかりがもてはやされているのだ。