アニメバブルが残した爪あと

http://www.asahi.com/showbiz/manga/TKY200905040063.html
アニメバブルが崩壊というけれど、アニメバブルが残した爪あとも深刻だと思う。

4、5年ほど前にアニメや映画コンテンツに融資をする銀行が増えた。
http://animeanime.jp/biz/archives/2004/10/post_68.html

しかし、ここで銀行に融資を持ちかける際にプロデューサーがどんなプレゼンをしたか、現在のアニメ事情を見ればわかる。
「キャラクターものはDVD以外の売り上げで現金回収が可能です」
「とくに萌えキャラは購買層の財布の紐がゆるい」
「萌えは日本の文化だから海外でも売れる」
「原作モノなら固定客がつかめます」
結果、内容空っぽの深夜の萌えアニメがバカみたいに増えた。ほとんどが原作モノでオリジナルアニメの割合は激減した。そして銀行の融資がとりやすいこの時期をチャンスとばかり、長期的視点が持てず、短期で作って短期で売り上げるような制作をプロダクションは強いられた。
人手不足でアニメ制作は海外、とくには中国に流れた。国内のアニメーターに振り分けられなかったのは本当に痛い。技術は育たなかったし、多忙で体調崩したアニメーターは廃業した。誉れ高きジャパニメーションの技術は確実に流出した。
現金回収がみこみやすい「キャラモノ」が重宝された。手塚アニメを代表するいわゆるリミテッドアニメーションは「ディズニーほど動かないが、シナリオで勝負」していた。そしてそれがジャパニメーションを発展させていたが、この「キャラモノ」重視の時代のせいでシナリオはなおざりにされた。
アニメをオリジナルでゼロから作れる脚本家や監督はアニメ業界に必要なくなり、去っていった。

銀行の融資を受けやすくなったからといったっていつかは返さなくてはならないお金。内容そっちのけで制作スピードだけあげたら、現金回収できないクソアニメばかりが出来ました。お金返せません。結果プロダクションつぶれる。80年代バブルで浮かれていた企業と同じことしただけ。問題はアニメーターは全然おいしい思いが出来ないままバブルは去ってしまったこと。経営陣だけおいしい思いして技術者たちは貧乏生活していたのはゴンゾを見ればたいへん良く理解できる。アニメバブルに乗って上場を果たしたゴンゾはもう今年中の上場廃止がほぼ確定している。

若手アニメーターは育たない地盤が出来た、ベテランアニメーターの廃業も加速する。それがアニメバブルが残した爪あと。

とはいえ実写映画はアカデミー賞をとった。アニメプロダクションではない会社の社員が作った個人制作アニメもアカデミー賞をとった。ポニョの商業的成功で長編アニメ映画も現金回収は見込めるというイメージは出来たかもしれない。だからコンテンツビジネスそのものは行き続けるだろう。しかし、もうテレビアニメは全く持って信用できないということを金融機関は学んだに違いない。
アニメは今後、長編アニメ映画大作か個人制作の短編に2分すると私は予想する。その形でしか融資が見込めないからだ。
中小アニメプロダクションは選択を迫られているのかもしれない。